研究概要 |
切削加工システムの自動化, 最適化を推進する上で, システムの各種の異常への対策が重要な課題となっている. その代表的なものが工具欠損であるが, その対策としてはこれまで, 例えば, 欠損の前駆現象を事前に検出し, 切削作業の停止や工具交換を行うことが試みられている. しかしながら, 欠損は極めて突発的な劣化事象であり, その前駆現象をとらえることは非常に困難である. 本研究では, 工具欠損の解析的予測を援用して, 加工システムに欠損回避機能を付与することを目的としている. 本研究で行った内容をまとめると次のようになる. まず, 超硬, ジルコニア及びアルミナ系セラミック工具の疲労破壊靭性試験を行い, 疲労き裂伝藩速度パラメータを測定し, 破壊力学の手法により工具欠損寿命関数を定式化した. ついで, 欠損回避機能を付与するために, 欠損寿命関数を用いて, 欠損回避を制約条件, 切削条件を制御変換, 評価関数を単位材料除去速度とする制御アルゴリズムを開発した. そして, CNC旋盤とインプロセス切削力測定系, マイクロプロセッサからなる欠損回避システムを構成し, 中炭素鋼の断続旋切削実験を行ったところ, 溶着性の欠損が生じる低切削速度条件を除けば本システムは有効であった. また, 本システムの採用により単位加工時間が少なくとも14%短縮されることが分かった. また, 工具欠損と工具摩耗が重畳する問題を対象として, 欠損回避を制約条件, 切削条件を制御変数, 単位加工時間及び単位加工費用を評価関数とする場合の最適化を行った. さらに, 工具寿命の確率的性質を明らかにするとともに, 保証試験の手法をインプロセスで適用して, 工具の信頼性向上を計る適応制御を試み, 約3倍異常に寿命命化するという良好な結果が得られた. 異常のように当初の研究目的はほぼ達成されたと思われる.
|