研究概要 |
近年, 製品の高品質・高機能化, 軽量化指向に伴って, 各種の金属クラッド板が多用されるようになってきた. 従来, クラッド板のプレス加工に関してはいくつかの研究がなされているが, その基礎となる塑性構成式(加工硬化特性, 降伏条件, 応力-ひずみ増分関係)や, 成形性評価法についてはまだあまり検討されていない. そこで, 本研究では, クラッド金属板のプレス成形限界および成形性評価因子に関して, 実験と解析の両面から次のような検討を行った. まず, クラッド板のプレス成形性を余地するためには, それを構成している単一板の塑性変形特性を詳細に把握しておくことが不可欠であるとの観点から, Al板とSPCC板の一軸引張り, 等二軸引張り, 平面ひずみ圧縮試験を行った. そして, 得られた応力-ひずみ曲線を, Hill, 後藤, Bassaniの異方性降伏条件式を用いて整理した. また, 等塑性仕事則にもとづいて降伏軌跡を描き, 異方性降伏条件式の比較を行った. 次に, Al-SPCCおよびAl-Cuの組合わせからなるクラッド板の等二軸引張りを対象にして, エネルギ法による近似解析を行い, A-B2層材の応力-ひずみ曲線, 降伏曲線, 成形限界線図(FLD)に対する材料の組合せとクラッド比の影響について考察を行った. また, Al-Cu-Alおよびその逆の組合せからなる3層重ね合せ管材のしごき加工を行い, 各構成部材の変形状態に対する加工条件の影響を実験的に検討した. その結果, クラッド板の加工硬化特性やプレス成形限界は, クラッド比によって変化すること, n値の差が小さい材料の組合せでは成形限界の向上はあまり期待できないことなどがわかった. 今後は, 組合せる板の異方性や構成部材界面における剥離なども考慮して, さらに詳細な検討を進めていく予定である.
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