研究概要 |
高分子材料の切削過程を解析的に把握することを目的とし, 材料の粘弾性特性を導入した構成方程式を定め, 材料の特性定数および変形応力特性を求め, これをもとに有限要素法を用いて切削過程のシミュレーション解析を試み, その有用性を明らかにした. 以下に得られた結論を述べる. 1.高分子材料の構成方程式を定めるための粘弾性モデルとして, 簡単な3要素固体モデルが実用的であり, 材料の粘弾性挙動はこのモデルで十分表現可能なことを, 硬質塩化ビニル樹脂を具体例として確かめた. 2.このモデルでは, 切削過程の解析に必要な3軸応力系での特性定数を, 単軸応力系のそれらから容易に求められる. そして単軸応力系の特性定数は単軸圧縮・除荷試験によって求めることができる. 3.塑性変形域までを包含する力学モデルとして, 3要素固体モデルに塑性要素を直列に結合した4要素粘弾塑性モデルが適用できる. 4.塑性変形中のひずみ速度履歴, 温度履歴は応力に影響を及ぼさず, 応力は着目する点でのひずみ, ひずみ速度および温度のみで決まり, 応力特性式はひとつの実験式として得られる. 5.4要素粘弾塑性モデルを用いる有限要素法シミュレーション解析を定式化し, 反復収束法によって定常切削状態を求めることができる. そして簡単な粘弾塑性モデルの設定にも拘わらず, 解析によって得られた切削状態は実験結果とよく一致し, 大せん断角, 小切りくず接触長さ, 小切りくずカール半径などのほか, 応力分布, ひずみ分布, 温度分布などについても高分子材料の切削の種々の特性をよく予測することができることを, 塩化ビニル樹脂を具体例として明らかにした.
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