研究概要 |
超高圧コンプレッサーのジャーナル周速度は数10m/sと一般に大きいため, 圧縮された高圧ガスが大気中に漏出するのを防ぐシールとしては浮動式の油膜シールが用いられる. しかしこのシールは, ある限度を越えて軸回転速度を上昇させると, ガスの漏出が始まって機能を喪失することがある. 製作した油膜シールの実験装置を用いて, 種々の運転条件のもとで気液界面の形状と挙動を調べたが, 気体が大気側へ吹き抜けるという実機で見られた現象が実験装置でも観測されるためには, シールの油側端面の形状が, ある要件を満たしていなければならないことがわかった. その要件を満たすような形状の実験用シール製作し, 実験を行なったところ, 軸回転速度を増していくと気体側へ漏れ出るサワーオイルの量が減少し, ついには気体が大気側へ吹き抜ける現象が観測された. その際, 気液の境界面は, 回転速度の増加とともにシール内面に次第に侵入し, ついにはその先端が油側に到達して気体の吹きぬけが生じることが観察された. このような吹き抜けは, 軸回転により発生する油の回転運動により, 軸半径の大きい位置で測定した圧力が実際の圧力より大きいことが原因となっている. シールすきま内の油膜の圧力分布はレイノルズ方程式を解くことにより求められる. 気体側のシール端からの軸方向に測った気液界面の先端位置の挙動について運転条件を種々変化させて調べた. 差圧が大きくなると, 界面侵入領域は全体として小さくなることがわかる. 偏心率εが小さくなると計算による界面形状は全体として小さくなるという特徴がある. 遠心力を考慮して給油圧力を補正すれば吹き抜け現象が生じない可能性のあることが判明した.
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