研究概要 |
本研究では, まずASNC815およびSCM420の2種類の材料に対して, ガスおよび真空浸炭焼入れ法で粒界酸化層のある歯車とない歯車を製作して歯車の断面の金属組織を金属顕微鏡で観察し, 粒界酸化層の発生状況, 結晶粒の大きさなどを調べた. つぎにこれらの歯車に対してパルセータ試験を行って浸炭焼入れ歯車の曲げ疲労強度に及ぼす粒界酸化の影響について検討を加えた. さらにこれらの歯車の歯低部表面に種々の加工(ショットピーニング, ショットブラスト, スカイビング加工, ハンドグラインダによる研削)を施し, パルセータ試験を行って, 曲げ疲労強度に及ぼす浸炭焼入れ後の歯低部加工の影響についても検討を加えた. その結果, ガス浸炭の場合には粒界酸化が生じるが, 真空浸炭の場合には生じないこと, 真空浸炭は処理時間は短いが高温処理であるため結晶粒が粗大化することがあるので浸炭条件の設計には注意する必要があること, またガス浸炭焼入れ歯車の曲げ疲労強度は, サブゼロ処理を施さない場合には粒界酸化の影響により真空浸炭焼入れ歯車の場合よりも小さいが, 施した場合には粒界酸化層の厚さによっては真空浸炭焼入れ歯車の場合よりも大きくなる場合があることがわかった. さらに, ガス, 真空浸炭焼入れ歯車のいずれにおいても, 曲げ疲労強度は浸炭焼入れ後ショットピーニング, ショットブラストを施すことによりかなり増大すること, ガス浸炭焼入れ歯車の場合には浸炭焼入れ後の歯低部の研削, スカイビング加工の削り量によって曲げ疲労強度が増大する場合と減少する場合があるが, 真空浸炭焼入れ歯車の場合にはこれらの加工によって減少することが明らかになった. 本研究により, 浸炭焼入れ歯車の曲げ疲労強度に及ぼす粒界酸化の影響が明らかになり, 曲げ強度設計を行うための有用な資料を得ることができた.
|