研究概要 |
見掛け上強い磁性を有する流体として磁性流体が開発され, その特性を生かした新しい応用開発研究が各方面で活発化している. それに呼応して流体工学の新分野としての磁性流体工学の研究領域が確立されようとしているが, その包含する研究領域は広範で複雑であるため, 磁性流体の流動現象を解明するには実験ならびに数値解析が不可欠となる. 最近のコンピュータ演算能力の飛躍的発達に伴い, 従来困難であった数値計算が可能になってきており, 複雑な基礎方程式系を有する磁性流体の数値解析も可能となってきた. そこで, 本研究では各種の数値解析手法を検討し, 磁性流体の様々な流動解析を行い, 実験によって数値解析の妥当性を確認することを見的としている. まず, ニュートン流体に対する安定かつ高速な有限要素法の新しい数値解析アルゴリズムを開発し, 他の研究者による実験結果との比較・検討を行った. 本手法を正方形キャビティ内の流れおよび円柱まわりの流れに適用した結果, 計算スピードは従来の有限要素法に比較して十倍以上速く, 計算時間と容量は差分法と同程度であった. また, 計算精度も高精度であることが確められた. 円柱まわりの高レイノルズ数流れにおいては, 非常に安定な数値解法で, 二次渦の変化やカルマン渦列の発達過程を調べることができた. つぎに正方形容器内に満たされた磁性流体の自然対流の数値解析を行った. その結果, 外部磁場の印加方向, 磁場勾配の磁性流体の自然対流におよぼす影響が明らかになった. また, 数値解析の妥当性を確かめるべく, 同じモデルを用いた実験を行った. 感温液晶を用いて流れ場および温度場の可視化実験を行った. その結果, 印加磁場方向を変化させることにより磁性流体の自然対流が逆転する様子が明らかとなった. 内部の温度分布は数値解析結果と良好に一致した.
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