研究概要 |
平板上の2次元乱流境界相に前縁が半円柱形状のモデル翼を障害物として設置し, 主流に対し迎え角をパラメータとして翼基部に発生する馬蹄形渦の脚部(以後脚渦と呼ぶ)の挙動を明らかにするため, 独自に設計製作した微小3線熱線流速計による乱流測定と全圧力の測定を実施した. 流れ方向に対するモデル翼の迎え角を4種類設定した. 迎え角が0.5, 10度の場合, 翼面上で剥離は発生せず, 脚渦は翼基部に付着する. 一方, 迎え角15度は脚渦が翼基部から離脱する場合に相当する. 脚渦が付着する場合, 主流方向の軸まわりに回転する渦運動が明らかに存在する. 脚渦の中心は, 下流に進むに従がい, 翼面および側壁面から離れ, いずれの測定断面においても, 翼面近傍と渦中心直下の側壁近傍の2次流れが卓越した大きさを示す. 迎え角を大きくすると流れが翼面から剥離し, 脚渦中心は翼面から離れた点に位置する. 脚渦が付着する場合, 乱流エネルギが渦中心付近で極大値を示し, 下流に進むにしたがって脚渦内で減衰する. 一方, 脚渦が離脱する場合, 渦中心と乱流エネルギが極大値を示す位置とほぼ対応するものの, 脚渦が翼基部から離脱しているので, 分布が極めて複雑になり, 特に, 乱流エネルギのレベルは迎え角が小さい場合と比較して, 著しく大きな値を示す. 全圧力測定の結果脚渦が付着する場合, 乱流エネルギ分布と同様に脚渦中心付近に全圧力損失係数が極大値を持つ. 側壁上の乱流境界層による全圧力損失が大きい領域を除けば, 脚渦内の2次流れによる旋回と全圧力損失が局所的に大きくなる領域の対応関係は極めて明瞭である. 脚渦が離脱する場合, 脚渦内ばかりでなく, 主流領域でも全圧力の大きい領域が存在し, 全圧力損失の機構が極めて複雑な様相を示す. 以上により脚渦内の乱流構造と2次流れの流動機構の関係を明らかにした研究成果が得られた. 複数の脚渦の合体の問題については今後の課題として残された.
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