研究概要 |
吸収式ヒートポンプは熱エネルギを直接駆動源にできるという特徴を有しているが, 性能に大きな影響を及ぼす吸収器内の熱及び物質移動に関する詳細な研究はほとんどなく, 何らかの手段により吸収を著しく促進させ, 性能向上を図ることが強く望まれている. 本研究は冷媒蒸気吸収過程にマランゴニ効果(表面張力の変化)を利用した高性能吸収器を開発するための基礎研究である. 微量の各種表面活性剤を吸収溶液中へ添加し, 従来この分野で全く用いられていたい光学的(レーザ利用)手法より, その吸収促進機構を詳細に解明し, さらに明らかにされた吸収機構を基に, 吸収促進効果を最も有効に利用できる吸収器内の構造についても検討を行い, 吸収器の高性能化を図ることを目的としている. 実験は, 冷媒として水を, 吸収溶液としてL:Br水溶液を用い, 静止したLiBr水溶液中へ表面活性剤としてオクタノール, デカノールを微量添加し, 吸収実験を行った. その結果, 溶液表面上に表面活性剤が液滴状に存在することが吸収時に激しいマランゴニ対流を発生させるという重要な基礎的知見を明らかにした. さらに, 構造異性体による検討から, 表面活性剤と吸収溶液間の界面張力がマランゴニ対流の発生に大きな影響を及ぼすことを示し, 最適な表面活性剤の選択指針が, これら表面張力, 界面張力の測定結果から示されることを明らかにした. 次に流下する吸収溶液中に発生するマランゴニ対流の挙動をダブルパルスルビーレーザにより干渉計測を行い, 流動中に生ずる液膜厚さの微小変動をミクロンオーダで可視化した. これらの結果から, 垂直流下式吸収器においてマランゴニ対流の効果が有効に発揮できるための根本的な機構を解明できる可能性が明確となり, 得られた結果の総合的な検討から高性能吸収器を開発するための基礎的知見が得られた.
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