研究概要 |
噴霧の着火過程に及ぼす乱流混合の影響を明らかにするために, 超音波噴霧器から円柱状に自由落下する予混合噴霧柱を反射衝撃波で点火する方法を開発した. そして, セタンの着火遅れを測定するとともに, イオン電流観測, 紫外, 可視, 近赤外バンドにおける火炎発光観測, ならびに高速度撮影によって, 着火過程を観察した. 得られた結果の概要はつぎのとおりである. 1.反射衝撃波背後の温度T5を下げて行くと, 1180Kで見掛けの活性化エネルギーが170kJ/molから31.6kJ/molに急減する(圧力0.85MPa). 2.1180Kより高温領域においては, 着火遅れは粉砕前の母滴の温度上昇や蒸発にはほとんど影響されず, 入射衝撃波の油滴粉砕作用や皮むき作用によって生じたミクロミストの気相化学反応に支配される. 3.気相反応はOHラジカルの化学発光とイオン電流を伴う前炎反応として始まり, 可視発光を伴う青炎に成長する. その後の火炎発光は端板や接触面で反射される膨張波の往復や到着に伴う対流と同期して出現する. 4.高温領域における170KJ/molという活性化エネルギーは高温空気流に同軸または直角に噴霧を噴射した場合の着火遅れに近く, 低温領域の31.6KJ/molという活性化エネルギーは高温静止雰囲気中に噴霧を噴射した場合や, 噴霧柱を乱した場合の衝撃波管データに近い. 5.温度を下げて行くと, 入射衝撃波の強度も低下するため, ミクロミストの発生量が減少し, 発光強度が激減する. そして1280Kで高速度撮影に掛かる発光が見られなくなり, 1060K以下では失火率が急増する. 6.二次流れを抑制した現在の衝撃波管では, ドレン管や噴霧器取り付け管からの二次流れによって噴霧柱が乱されていた改造前の衝撃波管とは全く異なる着火過程が観察されることから, 乱流混合は噴霧柱の着火過程に大きな影響を持つと推定される.
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