研究概要 |
ディーゼルエンジンは, その優れた燃料経済性により乗用車エンジンとしても普及しつつある. しかし, 燃焼室内の急激で高い圧力上昇のため, 特に燃焼衝撃音が強く放射される傾向にあり, その低減が強く望まれている. 本研究では, 燃焼室内壁に作用する圧力変動のパワーとエンジン外壁面から放射される燃焼衝撃音の音響パワーとの間に, 線形関係が成り立つと考え, エンジン構造の応答特性を調査した. まずこの関係を, 各周波数帯域のエネルギについて実験で確認し, この比例定数を伝達放射係数Gと定義した. 次に, 静止エンジンの燃焼室に, LPG-酸素-窒素の混合気を供給した後火花点火し, この時の伝達放射係数Gを算出することにより, エンジンの燃焼衝撃に対する応答特性を調べた. さらにエンジン構造各部を振動遮断及び吸遮音することにより, 1)空気加振経路, 2)ピストンーライナ経路, 3)ピストンー駆動系経路の3伝達経路の応答特性を個別に明らかにできた. 多気筒ディーゼルエンジンを含む5機種について伝達放射係数を求めたところ, 周波数に対し概略35dB/decadeの傾を持ち, 各帯域で15dBの幅に納った. さらに, 燃焼衝撃から騒音へ至る変換特性を詳細に検討するため, 伝達放射係数を, 燃焼圧力変動から外壁面の振動応答への変換特性を表わす振動伝達係数と, 外壁面の振動から騒音への変換特性である騒音放射係数とに分離した. これらの特性をシリンダブロッ, オイルパン等, エンジン外壁面を構成する各部について求め, 各部の寄与率を明らかにする方法を示した. これらの解析を発火運転中の円陣にも適用し, 上述の方法が実機の燃焼衝撃音の発生機構の解明に関しても有効であることを確認できる等, 有用な成果を上げることができた. しかし, 各伝達経路における燃焼衝撃の伝播過程については必ずしも上述の比例関係が成立しているとは言えず, 今後は測定法を含めた詳細な検討を要する.
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