研究概要 |
多孔質断熱層において, 断熱剤と境界壁との間の熱膨張差にもとづく間隙の発生あるいは断熱剤の不均一充てん等に起因する内部対流のチャンネリングが, どの程度断熱性能の低下をもたらすかを, 実験と解析の両面から検討した. 最も基本的な断熱系として, 側面から加熱され対向面を冷却された鉛直断熱層および下方から加熱された水平断熱層を対象とした. その実験的検討に際して, 最高圧力8MPa, 外径705mm, 高さ800mmの圧力容器に耐圧冷却面を組み込み, ガラス粒子と窒素ガスからなる多孔質層を製作し, 高温高圧断熱層を模擬した. 実験結果によれば, 間隙の大きさ, 層内気体圧力により, 対流発生の限界レイリ数が変化すること, 間隙の発生は, 条件によって, 熱伝達を抑制する場合もあるし, 促進することもあることを示している. すなわち, 間隙部流動抵抗の減少が対流の発生を促進し, 断熱性能を低下させる方向に働くと同時に, 圧力が低く, レイリ数が低いとき, 隙間空間の対流駆動力が弱く, 間隙部流体の熱伝導率が小さいため, 逆に断熱性能はむしろ増大させる方向に作用することがあり得ること, この両作用の相対的大きさによって断熱層熱伝達特性へのチャンネリングの効果が定まることを示している. この解析にあたっては, Brinkmanモデルに等価なBeavers Josephのスリップ条件を検討・考察し, この界面境界条件を用いるないしは狭い間隙内のHele-Shaw流れと多孔質内流れのアナロジを用い, また数値解析により層内対流発生の確認を行い, これにより層内対流発生の限界条件および断熱性能の, 修正レイリ数および多孔質構造, 間隙形状への依存性を明らかにし, それらの解析結果が鉛直および水平多孔質層に関する本実験結果ともかなりよく一致することを示した. なお, 壁面近傍で多孔質を構成する固体の存在が制限され空隙率が局所的に増大する場合にも, 等価間隙の概念を用い, 同様のチャンネリング効果の説明を試みた.
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