研究概要 |
温度成層乱流中では, 温度変動が浮力を諾起して乱流構造および拡散機構を大きく変化させ, 極端に強い成層状態では温度勾配に逆った方向への拡散さえ起こすことがある. 本研究は, アクティブ・スカラーとしての熱の拡散する場をパッシブ・スカラー(微量汚染物質など)が拡散する場合の, アクティブ, パッシブ両スカラーの拡散機構の相違を明らかにすることを目的とする. 1.スカラー拡散機構に関する実験的研究:(1)濃度変動計測システムとしてレーザ螢光と微粒子のミー散乱を利用し, 面および線状の光ディテクターアレイを用いたシステムを完成させた. これにより, 二成分物質の濃度分布とその時間変動が高応答で測定できる. まず, これを用いてマコルモゴルフ・スケールの乱流の微細構造の測定に成功し, つぎに(2)成層状態の乱流境界層流れを対象に, 運動量, 熱(アクティブ・スカラー)と物質(パッシブ・スカラー)の乱流拡散場の構造を調べた. その結果, アクティブ・スカラーとパッシブ・スカラーの拡散機構の相違は各々の拡散の経路と拡散距離(時間)の相違に起因することが明らかになった. 2.クロージャ問題の定式化とモデリング:まず, 最も単純化された乱流であるバーガーズ乱流について, スカラーの拡散方程式の解を導出し, パワースペクトルの時間発展とプラントル数1K在性を検討した. つぎに壁面乱流と自由断乱流の両方に適用できるモデルとして, 成層流に対する代数型乱流応力モデルの展開を行った. これは乱流エネルギーR, エネルギー消散を, 温度, 濃度変動 度Q^2, C^2とそれらのディストラリションεo・εcの方程式と乱流応力, 乱流フラックスの代数式から構成される. 本研究ではR方程式に壁面相度要素による乱流生成を, ε方程式に壁面の存在による圧力変動場の変形を考慮し, 両スカラーの拡散機構の相違は比ε^2/K, εo^2/O^2, εc^2/C^2の値が等しくなく拡散距離に依存することによることを示した.
|