研究概要 |
最近の生物工学の進展に伴い需要が増加しつつある二種類の比重の異なる液体を封入した超高速遠心分離機に発生する自励振動について調べた. この種の遠心分離機は二液間の自由界面に沿って回転する波動による自励振動を防止するために空洞が隔壁によって扇形断面の区画に分割されているから, 従来は液体による自励振動は発生しないと考えられてきた. 本研究ではこのような対策を施した遠心分離機でもなお液体波動による自励振動が起こり得ることを理論と実験の両面から明らかにすると共に, その防止対策について検討した. 得られた結果を要約すると (1)軸の回転数が液体を含めた系の危険速度と液体の固有振動数の和にほぼ等しくなる領域で, かつそのような領域でのみ系は不安定に成り得る. (2)それゆえ, 液体の固有振動数が増加すれば, 不安定領域は高回転数側に移行し, さらに軸回転数以上になると全回転数域で系は安定となる. 全回転数域で系を安定にするためには一般に空洞の分割数と両液の密度差を共に十分に大きくとることが必要である. (3)分割空洞の場合の自励振動は各分割区画内の液体があたかも一つの後進波が空洞内を回転しているかのように振舞うことによって生じ, その発生の基本的なメカニズムは隔壁のない場合と同じである. したがって, 逆に不安定領域に関する上記(1)の関係は隔壁のない場合にも成り立つ. (4)2次以上のモードの液体波動による自励振動も発生する可能性は存在する. しかし, 液体の密度差が小さい場合と同様に, 不安定領域は狭く, 小さな外部減衰によって抑制されやすい. (5)一方の液体の厚さをかなり薄くすれば, 不安定領域は狭くなるが, 充填比の影響はあまり大きくない.
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