研究概要 |
複数個の摩擦力などによる自励振動系が弾性要素や粘性要素, あるいは介在する流体などの弱い力の連成要素で相互に結合された多体振動子系における相互引き込み現象について, 引き込みの条件あるいは引込み振動数などを求める. また, 引込み領域外つまり引き込みへの遷移領域におけるカオス振動などを, ディジタル・シミュレーションによって求めた. さらに, これらの挙動を平均法あるいは調和バランス法を用いて理論解析を行った. まず初年度は, わずかに異る固有振動数を持つ2本の摩擦自励振動子を, ダンパーで連結した場合およびばね連結の場合について, 固有振動数の差, 離調度を変え, 結合の係数の値を変化させて解析した. 次年度では, 2体系の結果をもとにして, 多数(n=2, 3, 4, 5)個の摩擦自励振動系が固有振動数の大きさの順に並べられ, ダンパーで連結した1次元等差配列系における引き込みの限界や振動数, あるいはカオス振動の挙動を解析した. (1)引き込み振動の振動数は, n=2, 3, 4, 5のいずれの場合も固有振動数の平均値に近い値を示す. 引き込み限界の結合係数の値は離調度すなわち固有振動数の差の値にほゞ比例する. 引き込み振動は, 全ての振動子の振動数が等しいのみならず振幅も等しくなる, 一方位相が一定量だけずれてくる. (2)カオス領域における振動は次の4段階に分けられる. 結合粘性係数の値が小さい方から順に, (カオス1)互いに両隣りの影響を受け近寄りながら, 全振動子が自己の固有振動数成分を失わない. (カオス2)全ての振動子の主振動数成分が, 自己固有値とは異る2値の卓越振動数成分に2極分化する. (カオス3)全振動子の主成分が2値から一つの振動数成分とはなるが, 引き込みとはいえない. (カオス4)全ての振動が消失する. (3)理論解析結果は数値解析結果に比較的良好な一致を示している.
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