研究概要 |
閉ループ・機関・調速機系の不安定およびリミットサイクルの振幅・周波数に及ぼす諸因子の影響を明らかにし, 線形近似計算とも対照した. その内容は以下のように要約できる. (1)サブベンチュリ負圧の応答遅れに並んで機関回転軸系の慣性モーメントの影響はきわめて大きく, その値を標準値(供試機関の値)の1.8倍以上に与えるとほぼ全回転速度域においてハンチングはあらわれない. (2)調速機系の等価質量を小さくしていくとごく低い回転速度域を除いてリミットサイクルは消滅する. ただし現実には質量を小さくすることは難しい. (3)調速機系の減衰係数を変えてもリミットサイクルは消滅しない. (4)調速機系の調節棒復原ばねの自然長を短くすると最大振幅を示す回転速度域は低回転速度側に移動するが, 振幅の最大値はほとんど変わらない. 復原ばね定数を大きくすると振幅は小さくなる. ただし自然長を短く, ばね定数を大きくすると制御力が小さくなるから現実には大きな設計変更は難しい. (5)各シリンダ吸気行程に基づく短周期波を無視すると振幅計算値は非常に大きくなり, 周波数は低くなって実測値と合わない. (6)調速機なしでの機関運転を不可能にする回転速度に対するトルク勾配, 右上り特性がリミットサイクル挙動に及ぼす影響は小さい. 調節棒変位に対するトルク勾配を小さくしていくとリミットサイクルは消滅する. ただし現実の機関ではトルク勾配は大きくなる傾向にある. 以上の結果から, 閉ループ・機関・調速機系の非線形リミットサイクル挙動に及ぼす支配的因子が明らかになり, また設計の観点からは, 機関の小形化・出力増大を図るほど速度制御系の設計点は不安定になりやすく, ハンチング領域は広がり振幅が増大することがわかった. 従って本研究の成果はリミットサイクル挙動を明らかにするとともにハンチング振幅を予測する上で有用であろう.
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