研究概要 |
1.超電導コイルを用いた直流系統連系の実験的検討:サイリスタを用いた三相ブリッジ交直変換装置を2組作製し, 超電導コイル(インダクタンス 95H, 最大電流20A, エネルギー貯蔵容量19KJ)と組合せて, 2面の分電盤を接続する模擬直流送電系統を構成した. パーソナルコンピュータを用いた交直変換装置の計算機制御によって, 電力の吸収・放出実験を行なった. 電力の指定値としては, i)一定電力制御, ii)一定電力の吸収・放出の切換制御, iii)正弦波状の吸収・放出の3種類とし, 最大電力の大きさと周波数を変化して実験した. その結果, 直流連系された両系統から独立に電力の制御を行なえることが確認された. ただし, 電流値などの検出, 制御量の計算制御量の出力の1サイクルに要する時間が0.3秒程度であるので, 吸収・放出の切換周波数は0.6Hzが限度であった. この点については, 制御方式, 制御プログラムの改善など, 検討の余地が残されている. 2.超電導コイルを用いた直流系統連系の定態安定度向上効果の検討:くし形のモデル電力系統を対象に, 固有値計算によって, 直流系統分割ならびに超電導コイルの定態安定度向上効果の分析を行なった. その結果, 直流分割のみによっても安定度はかなり向上するが, 超電導コイルによるエネルギー貯蔵機能を導入し, 各変換装置を適切に制御することによって, さらに安定度が向上することが明らかとなった. 特に, 連系線に潮流がある場合には, 潮流が流れ出す系統(順変換器側)で安定化効果の大きいことがわかった. 3.過渡安定度向上効果の検討:上記2.と同じモデル系統に対して, 発電機脱落による系統動揺時の動揺抑制効果を, 計算機シミュレーションによって検討した. 直流系統分割によって, 一方の系統におけるじょう乱の影響がほとんど他方に及ばなくなるが, 超電導コイルによって, 動揺が速やかに減衰することが明らかになった.
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