研究概要 |
電子写真現像剤が備えていなければならない基礎的特性は, 粒径, 抵抗率, 溶融温度, 等広い項目に及ぶが, なかでも帯電量は重要である. また, 本研究では最終的には, 予め電荷を付与した一成分現像剤を考えているため, 現像剤の電荷保持能力にも注目して研究をすすめた. はじめに, 一成分現像剤を構成させようとする原料ポリマー粉体の帯電性を評価した. その結果, ポリビニルアルコール, ポリ塩化ビニル, ナイロン, 等の粉体は電荷保持能力が乏しく, コロナ帯電により付与した電荷は比較的短時間のうちに消滅することがわかった. 一方, ポリエチレン, エポキシ, テフロン, 等の粉体では, コロナ電荷は少なくとも1週間以上保持されることが確認された. 実際の現像剤(トナー)はポリマーを主成分に, 着色のための顔料, 電荷制御剤, 流動化剤, 等複雑な組成を有するが, 本研究では, とりあえずポリマーと顔料のみからなる擬似現像剤を試作した. それらの電荷保持能力をコロナ帯電後の表面電位減衰により評価した結果, 試作した擬似現像剤は主成分であるポリマーの挙動をほぼそのまま引き継ぐことが判明した. すなわち, ナイロンを主成分とするものでは電荷の減衰が比較的速く, ポリエチレン, エポキシ, ポリエステルを主成分とするものは電荷の保持能力がすぐれている. さらに, 試料粉体における電荷の保持状態をしらべるため, 粉体層の熱刺激電荷減衰を測定した. 得られたトラップの深さはポリマーの種類により0.8〜1.2eVの範囲に分布した. ナイロンのように電荷保持能力の乏しいポリマーはトラップが浅く, ポリエチレンのように長く電荷の保持されるものではトラップの深い傾向が認められた. 試作した擬似現像剤の摩擦帯電量は1〜10μC/gであった. 粒径が大きいためであり, この値に問題はない.
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