研究概要 |
青色発光素子用材料として有望なZnSe;ZnSの物性制御を目的に, MOCVDによる不純物添加を試みた. ZnSeにおいては前年度同様P型不純物添加について検討を行ったが, 本年度は不純物材料としてリチウム(Li)を選んで実験を行った. またZnSにおいてはアルミニウム(Al), 塩素(Cl)などのn型不純物添加を行い, 得に低抵抗化について検討を行った. 1.ZnSeへのLi添加:I族元素であるLiは, ZnSe中でZnと置換することによってアクセプタと成りうるが, 原子半径が小さいため格子間原子, つまりドナに成りやすく, さらにLi単体では化学的に非常に活性なため, 成長系への供給が困難であるなどの問題があり, これまでほとんど報告がなかった. そこで今回, Liの供給源としてシクロペンタジエニルLiという有機物を用いてLi添加を試みたところ, 低温におけるホトルミネッセンス(PL)特性より, 浅いアクセプタ準位から関与した発光を確認した. さらにLiはZnSe中でZnの空孔を補い深い準位からの発光を抑える傾向があり, LiはZnSeのP型不純物として有望であることを明らかにした. 今後は他のLi原料を検討すると共に, 電気的特性の検討を行いPn接合の形成を実現したい. 2.ZnSへのn型不純物添加:ZnSはZnSe以上に物性制御が困難と言われており, n型でも10^<5〜6>Ω・cm^-という高抵抗を示す. これはアンドープZnSがまだ結晶性が不十分なためで, 本研究ではまずアンドープ膜の高品質化から検討を始めた. その結果, PL型特性において励起子発光が支配的な比較的良質な結晶が得られた為, トリメチルアルミと塩化水素を用いてAlとClの添加を行ったところ, どちらも1Ω・cm程度の低抵抗膜となり, しかも強い青色発光を示すことから, 青色発光素子の実現に対して期待できることを示した. 今後はさらに高品質化をめざすと共に, 他のn型不純物についても検討を行う予定である.
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