研究概要 |
本研究は三元組成から成る半導体混晶の大型単結晶化を目的として行った. そのために, 以下に示すように数値解析と三種類の結晶成長技術を開発し, 新たな知見を得た. 1)有限要素法によるInSb結晶中のTe不純物の濃度分布解析: 三元混晶半導体結晶の組成制御の観点から, 成長界面でのモデルを提案した. 具体的にはInSb中のTe不純物濃度について調べ, 成長速度が強く依存していることが分かった. 実験結果との対応から, 提案モデルの有用性が判明した. 2)超音波振動導入チョクラルスキー法によるInSbとInGaSbの結晶成長: 超音波振動を原料融液に導入すると, InSb結晶では結晶中央部に位置するファセット域が結晶周辺部に移動することが確認された. In, Ga, Sb混晶成長では超音波振動を導入するとx=0.10までの混晶の単結晶成長が認められた. x値が増加すると単結晶になりにくいが, 振動出力を増加すれば単結晶成長域が増加することも判明した. 3)回転振動チョクラルスキー法による不純物縞の抑制: 三元混晶半導体の大型化に伴ない, 品質の低下が予想された. 成長モデル実験としてInSb中のTeによる不純物縞の抑制を当面の目的とし, 成長結晶に左右交互に回転する回転振動を導入した. この結果, 正弦波関数的に変化していた結晶の成長速度がほぼ一定となり, さらに拡がり抵抗値も一定となった. 成長速度の変動巾は回転角度の減少と共に減少することがわかった. 4)回転ブリッジマン法による三元混晶半導体の結晶成長: 三元混晶の成長面の融液の相対運動を高めるために, 通常のブリッジマン成長時に成長アンプルの高速回転運動を加えた. この結果, InBiSbとInGaSb混晶実験では結晶径10mm, 長さ20数mmの単結晶を成長させれた. 成長結晶の組成分布もほぼ均一であり, 本研究目的を達成できた.
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