研究概要 |
申請者らが提案した行列の一意分解に基づく公開鍵暗号方式を、より一般的な形に拡張し、その信頼性,処理速度等について詳細な検討を行った。 まず、考え得る複数の解読法を想定し、それらに対しても十分高い信頼性を有するよう、有理関数の順序解法の手法を導入した。この有理関数の順序解法の導入により、本暗号方式の高信頼化が可能となったが、同時に公開鍵記述量,秘密鍵記述量の削減が達成できた。しかし、さらによりコンパクトな公開鍵暗号方式を実現するため、部分体の概念を用い、公開鍵記述量を約10Kbit,秘密鍵記述量を3Kbitにまで圧縮することに成功した。一方、暗号化変換,復号化変換の高速化に関しても種々検討を行った。本暗号方式は、暗号化・復号化変換が、有限体GF(【2^t】)上の四則演算で構成されているため、除算に要する計算時間が比較的大きい。そこで、正規基底を用いた除算を高速に実行するアルゴリズムを考案し、それを暗号化・復号化変換の除算部に採用した。また、本暗号方式の特徴を生かし、並列処理,パイプライン処理の導入についても検討し、比較的小さな回路規模で、数Mbpsのビットレートでの伝送が可能であることと確認した。 公開鍵暗号方式の電子メール通信への応用に関しては、メッセージの変換を安全且つ正確に実行するための、親展,内容証明,配達証明,プライバシー保護等を実現する方式について、基礎的な検討を行った。これについてはシステム内に転送者,認定者なる2人の調停者を設け、それぞれの機能・役割を分離独立することで、プライバシー保護を実現する方式と提案し、その有効性について検討した。また、親展,内容証明,配達証明等については、公開鍵暗号方式によるディジタル署名方式が有力であると考えているが、これについては、現在検討を進めている。
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