研究概要 |
本研究せ2カ月にわたり次のような研究課題を設定し, 研究を実施した. 1. 変調電子ビームの放射パターンを考慮して, full wave計算により地上の電磁界強度を計算可能とする. 2. 項目1で完成した計算ソフトを適用して, ロケットと大地との立体観測により得られた自然電波やホイスラ波の強度を解析し, VLF波の下部電離層の伝搬機構を明らかにする. 3. 予測結果に基づき, 地上観測のためのVLF受信機を試作し観測に備える. 以下に上述の項目に対応して得られた成果の概要を述べる. (1)振幅が任意に分布する波動の伝搬を取り扱えるfull wave計算法を開発した. kベクトルが電離層に垂直である鋭い指向性のVLF波を入射した場合, 電離層吸収は, 昼間で10数dB, 夜間では7-8dBで, 波源直下へ主に伝搬する. 水平方向の減衰率は100km以内で-10dB/100km, それ以上の距離では-3dB/100kmとなった. 従って, 電子ビームより放射された波は地上の最大強度地点から-40dBの減衰で1000kmまで伝搬することが分かった. (2) 電子ビームより放射された波動とオーロラに伴うヒス波動とその発生メカニズムが類似しているので, 南極で, ロケットと地上で観測されたオーロラヒス強度を解析した. その結果, ヒスのkベクトルがトランスミションコーンに入る確立は0.01程度であった. 従って, (1)の結果を考慮すると電子ビームより放射された波動の大地上での総合減衰は約50dbであることが分かった. (3) 地上での観測に備えるため受信機を製作し, 大地上の雑音レベルを測定した. その結果, 空電雑音の最小値は0.1μV/mHzであった. 以上の結果から, シャトル上のビーム電力を1kw程度とすれば, 地上での観測が可能と考える.
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