ラマン型自由電子レーザでは、電磁波と電子プラズマ波の非線形相互作用を利用するために、一般に、大口径、高密度の電子ビームが必要である。ところで、この相互作用は電子ビームの表面近くで起るので、利得を上げるためには、内部の詰った中実ビームを用いる必要はなく、中空ビームを用いても中実ビームの場合と同程度の利得が得られるはずである。本研究では、この考えにもとづき、中空の相対論的電子ビームを用いたラマン型自由由電子レーザのモード解析を行い、次のような結果を得た。 1.中空の電子ビームを用いると、奇対称および偶対称の何れの電子プラズマ波にも、それぞれ二つの異なった伝搬モードが現れる。一方は、中実ビーム固有のモードが変形されたものであり、他方は中空ビームに固有のモードである。 2.奇対称の電子プラズマの場合には、ビームが薄くなるにつれ、電磁波と強く相互作用するモードが前者から後者へ移る。一方、偶対称の電子プラス波の場合には、常に前者のモードが電磁波と強く結合する。 3.奇対称および偶対称の何れの電子ブラズマ波の場合でも、中空ビームを用いたとき、電磁波および電子プラズマ波の増大率が、中実ビームを用いたときと同程度あるいはそれ以上の値をとり得るようなビームの厚さの最適値が存在する。 4.上で得られた最適の厚さの中空ビームを用いることにより、レーザの利得および出力を低下させることなく、電子ビームによって運ばれる電流のみを大幅に減少させることができ、レーザのエネルギー変換効率を改善することができる。
|