研究概要 |
本研究では, グラフィックスを用いた離散型シミュレーションのための会話型システムの実現を目指した. 本システムは, 従来からあるシミュレーション言語によるモデリングではなく, モデリングからシミュレーション実験, 結果の解析までを含めた統合システムを, 会話形式で利用できることを目的としている. また, グラフィックスを用いて視覚的にすべての処理を行なうことによって, シミュレーションについての予備知識がなくても, モデリングから結果の解析までを行なえることを目的とした. 当初の目的は, 簡単な図形要素から成るグラフを画面上に作り, それぞれの要素の論理動作を指定することによってモデルを作り上げるシステムの開発であった. このシステムは, DEC2020上にSimulaによって実現し, マンマシンインタフェースを改善するためにSmalltalk-80によるワークステーションへの実現を行なった. 離散型シミュレーションについては, その適用範囲をいかに広くできるかがシステムの使いやすさに大きく影響するが, 本システムでは構成要素の論理動作指定に汎用性をもたせるように工夫することによって満足できる結果が得られた. また, Smalltalk版では, この部分をオブジェクト指向の考え方によって容易に拡張できるようになっている. 視覚的なマンマシンインタフェースをパソコン上で実現するには, 現状ではまだ処理能力が不足しており, 階層的にモデルを詳細化する際のウィンドウの重ね合わせなどで使い勝手が悪く, 満足できる結果は得られなかった. また, メモリと処理速度の制約から教育用はともかく, 実用的なシミュレーションを行なうのは無理である. ただし, カラーを使えるなど有利な点もあることから, 少なくともモデリングの部分については今後ともパソコンレベルへの移植を継続する計画である.
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