研究概要 |
本研究は, 既に銅蒸気レーザ(Cu Vapor Laser;Cu-VL)の低温度動作化において成果を収めた複合金属蒸気(Metal Vapor Complex;MVC)反応を応用して, 従来低温度蒸気化が不可能であった高融点高沸点金属の低温度高密度蒸気発生の可能性を追求すると共に, このような新しい手法による低温度動作の各種金属蒸気レーザ(MVL)を実現することを目的としたものである. 以下に研究成果について記す. 1.MVC反応を, Cu以外の金属粉末と低温度昇華性金属塩との間の反応に適用して, 放電管温度, Tt=100-400°C程度の低温度領域(低温度昇華性金属塩のリザーバ温度Trは20-100°Cと更に低い)において, 各種高融点高沸点金属の蒸気発生が可能となっていることが確認出来た(レーザー研究電気関係学会等で報告). これらの検討結果には, MoやRe等, 全元素中で最も高温の融点, 沸点を示す材料も含まれており, このような高融点高沸点金属材料の低温度蒸気化にもMVC反応を適用し得ることが判明した. 2.MVC反応を具体的にMVLに応用し, Cu-VL u次いでCa-Mn-VL(未発表), Pb-VL(電気関係学会)の低温度動作化を実現した. 現在迄に, 既存の金属単独でのMVLの動作温度690°C(Ca-VL), 1060°C(Mn-VL), 800-1000°C(Pb-VL)に対し, Ca(or Man or Pb)+AlBr_3のMVC反応を用いたMVLにより, Tr=20-100°Cの範囲で, Tb=450-500°C(854,866mm Ca-VL), Tt=520-600°C(534.1mm Mn-VL), Tt=670-700°C(722.9mm Pb-VL)の低温度動作を実現している. Ca-,Mn-,Pb-VL共にレーザ発振に至った所期段階にあり, 今後更に最適条件を検討することによって, より一層の低温度動作化と, 高出力高効率化が期待出来るものと考えられる. 3.Cu-VL以外の低温度動作MVLに適用するため, 既に筆者等が実現した低温度動作のCu-Au-VLについても, レーザ装置周辺機器に関する発展改良や周辺技術の改善と発展的研究等, MVC反応を用いたMVLの動作限界の究明と高性能化への検討を行った(Trans.IEICE, 電気関係学会, 応用物理学会). 本研究は世界に先駆けて実証された画期的なものであり, 今後一層の研究の推進が望まれるが, その基礎は十分に築かれたと考えられる.
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