研究概要 |
本研究では強磁性薄膜から成る光導波路を伝搬する光波と表面静磁波との相互作用の光デバイス応用を目指している. このために, 導波路作製ならびに特性評価に重点を置き, 以下の検討を行なった. 1.強磁性薄膜導波路の作製:光波ならびに表面静磁波が伝搬可能な強磁性薄膜として(La,Ga)置換YIGを取り上げ, GGG基板上にLPE成長させることによって得た. なお, 単一モードチャネル光導波路を, Arイオンミリングによりリブ形状をYIG薄膜上に形成することによって作製し, 静磁波導波路として薄膜を直接用いた. 2.光導波実験:この導波路に対し, 波長1.15μmのHe-Neレーザが光による導波実験を行ない, 単一モード伝送が実現されていることを確かめ, 更にリブの効果による光の閉じ込めが有効に動作していることを確認した. 3.静磁波励振実験:マイクロストリップ線路型トランスデューサを用いて静磁波励振を試み, 磁性薄膜構造特有の3種の静磁波モードが励振可能であることを確かめ, 更に表面波モードが最も効率よく励振できることを確認した. 4.特性評価:外部磁界による光波制御実験ならびに静磁波透過特性測定を通じて磁気光学係数, 飽和磁化, 磁気共鳴半値幅, 磁気回転比等を求め, 文献記載のYIGバルク単結晶の値とほぼ等しい値を有し, 作製した薄膜が光学的かつマイクロ波的に良質であることを確かめた. 5.光波と表面静磁波との相互作用:今回, 光波と表面静磁波との相互作用を行なわせるまでには致らなかった. しかしながら, 理論的ではあるが作製した磁性薄膜を用いて現実的な寸法でデバイス構成が可能であることを確かめ, 実現の見通しを得た.
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