研究概要 |
1.脳磁界計測システムの開発を, 誘発脳磁界の測定と並行して行なった. 計測システムは, (1)2次微分でグラジオメータを含む液体ヘリウムデュワーを頭部上の任意の点にアクセスする装置と, (2)末梢神経を刺激するための電流パルスを種々の時間間隔で発生, もしくは純音や言語音などの刺激音を任意の順序で発生する刺激装置, (3)SQUID出力の磁気信号を刺激の種類により個別に収録して加算平均したり, 定常応答の振幅や位相を検出する装置からなる. 2.沢骨神経を電流刺激する体性間隔誘発磁界(SEF)においては, 刺激後80とし60msに互いに逆向きのピークを持つ応答を, 純音バーストによる聴覚誘発磁界(AEF)では, 100と180msにピークを持つ応答を観測した. 側頭部でマッピング測定した磁界分布からは, SEF, AEFともに電流双極子が発生源として推定された. 最小2乗法に基づく計算により求めた双極子の位置は, それぞれ体性感覚野と聴覚野にあり, MRI断層像の観測結果と良く一致した. また双極子の大きさは5〜30nAmである. 3.連続刺激によるSEF定常応答では, 位相遅れが刺激周波数に対し線形となる関係がみられ, その傾きからは, 刺激周波数に依存して3つの時間遅れの値が求まり, うち2つは単一刺激による過渡応答のピークの潜時に一致した. 他の最も短い時間遅れは, 早期成分の潜時に対応すると考えられた. 4./a/や/ka/などの単音節音声を純音と混合して与えるAEFにおいては, 純音とほぼ同じ潜時のピークを持つ音声応答が得られた. また, 音声応答において第2ピークの後に遅い成分が左側頭の後部でみられることがあった. 双極子のパラメータの推定では, 純音, 音声ともに右脳半球の双極子の大きさは左脳半球のものと同じか, より大きい. 双極子の位置は左脳半球で純音と音声でわずかな差異があった.
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