研究概要 |
本研究者は非破壊的・非接触的に物質の音響特性を定量計測できる直線集束ビーム超音波顕微鏡に関する基礎研究及び実用化のための開発研究を進めている。本測定方法はV(Z)曲線解析法を使用しており、その測定原理・測定システムはほぼ確立され、応用研究の段階に入りつつあるのが現状である。本システムを実際的に適用する材料を考えた場合、これまでの研究結果から明らかなように単結晶あるいはガラス状材料については、問題はない。しかしながら、セラミックスや合金などの多結晶材料、あるいは吸収損失の大きな材料、すなわち散乱や吸収などの音響的損失の大きな材料に対しては、物質の音響特性(速度・減衰)を一定の超音波周波数だけで測定しても意味がなく、その周波数依存性を測定・抽出する必要がある。そこで、本研究は材料の構造的要因あるいは吸収係数を測定データから抽出できるように本定量計測法を拡張するのが目的である。 61年度の研究成果を要約すると以下のようになる。 1.音響特性の周波数特性の測定方法の確立:30MHzから400MHz帯をカバーする直線集束超音波ビームを開発し、V(z)曲線解析法による音響特性の周波数特性の測定方法を確立し、溶融石英,フェライト,PMMAなどの試料に対して実験を行った。 2.漏洩弾性表面波に対する損失機構とバルク超音波(縦波・横波)に対する損失機構を実験的・理論的に比較検討し、測定された周波数特性から材料本来の音響特性を抽出するための導出法を確立した。 3.音響損失を考慮した漏洩弾性表面波の伝搬特性を理論・数値解析する手法を確立した。その結果、実験で得られた漏洩弾性表面波の散乱減衰の周波数依存性は主にその横波成分の周波数依存特性に起因することが明らかとなった。
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