研究概要 |
欠損部位が既知のテクスチャ画像の欠損部を、視覚的に不自然さがないように修復する手法を提案し、その有効性を視覚評価実験により示した。 1.修復手法:処理対象とするテクスチャ画像は、その適当な大きさの部分画像のフーリエ振幅スペクトルパターンが位置に対して不変と考える。このような仮定が成り立つテクスチャ画像では、欠損部を含まない別の部分画像から振幅スペクトルを計算し、これを欠損部を含む部分画像の欠損する前の振幅スペクトルとみなすことができる。従って、欠損部の修復問題は、欠損する前の振幅スペクトルと欠損した後の画像から欠損部を推定する問題となる。本研究では、振幅スペクトルと画像の部分的知識のみから元の画像を再構成する手法(Feinup,1978)を参考とし、まず欠損部を適当に補間してフーリエ位相スペクトルを求め、これと、与えられた振幅スペクトルとを合成、逆フーリエ変換して得た画像を元にして、再び欠損部を補間し、これらの操作を繰り返していくという手法を基本とした。振幅スペクトルを求める際には、対象区間の両端における値の跳躍の悪影響を避けるために、ハニングの窓をかけた。10種類の自然テクスチャから64×64画素の画像を得、そのうち欠損部を11×11,16×16,22×22の正方形として修復実験を行った。処理ループの繰り返し数が3〜4回でほぼ一定の画像に収束し、修復跡は欠損部16×16では半数が目だたなかった。 2.視覚評価実験:10種類の自然テクスチャに対して、また、欠損形状を縦長,横長の矩形として、本手法を適用した画像と欠損部に任意の部分のテクスチャをたんに挿入しただけ(単純挿入法)の画像とを被験者に観察させ、欠損部の有無,形状を判別させる評価実験を行った。その結果、欠損跡が判別できたのは、本手法では半数ほどであったが、単純挿入法では9割にも達し、本手法の有効性が確認できた。
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