研究概要 |
生体免疫機能計測用半導体センサの製作プロセスにつき, 基礎的検討を行った. 免疫センサは, 抗体固定化薄膜を半導体デバイス上に作成する技術の開発で鍵である. 本研究では, 従来の電子デバイス製作プロセスとの整合性に優れたプラズマ重合法を用いて, 半導体上に, 抗体固定化の担体となる有機薄膜を作成し, その上に抗体分子を固定化するプロセスにつき, 検討した. このプロセスにおいて, (1)プラズマ重合膜の電子材料としての安定性, (2)分子の配向性をそろえた抗体の高密度固定化技術, が必要である. プラズマ重合膜は, ピンホールの少ない有機薄膜を得る手法として最も有望なものであるが, 放電現象を利用するプロセスに特有の荷電現象が存在する. この現象は, センサデバイスへの応用においては, 動作の不安定性を引き起こす原因となる. この点につき, 本研究では, プラズマ重合膜を用いたMISキャパシタのCV特性と, ESRによる測定結果との比較を行い, 原因が, プラズマ重合膜中に残留するダングリングボンドに基づくキャリアトラップの充放電であることを明らかにした. さらに, ダングリングボンドを減少させる手段として, 重合反応後の熱処理を試み, 窒素雰囲気中, 200°C程度での処理が有効であることを示した. 抗体分子の固定化に関しては, 反応性ガス中での担体プラズマ重合膜表面への感応基の導入と, 固定化分子の前処理とを組み合わせたプロセスを開発した. アンモニアガス中でのグロー放電処理により, 有機膜表面には, アノミ基(NH_2)が導入される. 一方, 抗体分子は, 抗原認識機能を保持したFab'-SH分画のみを精製することができる. 担体表面の-NH_2と固定化分子中の-SHとを特異的に架橋することにより, 配向性をそろえた固定化反応が可能になる. この手法により, 6×10^<11>cm^<-2>という高密度固定化が可能であることが実験的に明らかになった.
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