研究概要 |
ステップ状に変化する入力が印加されるサーボ系において, 行き過ぎがなく, かつ速応性の優れた過渡特性を実現するための制御手法としてポジョカスト制御が従来からよく知られている. ところが, この手法はあらかじめ決められた入力に対しオフラインで最適目標値を計算しておくことを前提にしており, 実用上からは数々の制約をうけることになる. これに対して, 著者等はこれまでに, 速度信号をバンバン要素を通して入力端にフィードバックすることによって, 入力波形の切替えのタイミングを自動的に求めることを提案した. 更にシステムの伝達関数が未知の場合であっても目標値が一定の場合は, フィードバックパスのバンバン素子の高さに関する最適値は, 試行を系統的に繰り返すことで学習的に求められることを見い出し, 実用化に向けての検討をすすめてきた. 以上の結果をふまえ, 本制御手法をさらに広く適用しようとする場合, なお残された問題点は, 目標値の高さが変化する系においては変化に応じて, そのつどバンバン素子の最適な高さを設定し直さなければならない点である. このプロセスは入力の高さを検出しこれに応じてシステムを調整することに相当し, フィードフォワード的な手法といえる. ところが, 今回, モータの最大速度が入力ステップの高さに関する情報を持つことに注目し, 速度帰還パスにモータ速度の最大値を記憶させる特性をもたせ, これとバンバン素子のもつ機能とを組み合わせることによって, 自動的に最適値が設定できることを見い出した. さらにこの考え方の実用化にあたっては, 速度帰還パスに簡単なヒステリシス要素を挿入するだけでよく実現が極めて容易であることも分かった. この考え方をクレーンの振れ止め制御に適用した結果極めて良い制御効果を得ることができた.
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