研究概要 |
神経系の情報は脳波, 眼球運動および筋電図の多次元の観測量として現れる. すでにわれわれは脳波, 眼球運動および筋電図を同時計測し, 意識および睡眠の深さの定量化の研究を行い, 良好な結果を得ている. さらに本研究では, 睡眠脳波中に現われる特徴的な波である睡眠紡錘波に注目し, 睡眠の深さとの関係について検討した. 睡眠紡錘波は12〜14Hzの帯域の特徴的な波であるが持続時間が短い非定常な波である. 本研究では従来の脳波波形認識法を改良したダブル・スタンダード法を提案し, 非定常な波を検出, 認識するのにきわめて有効であることを示した. この方法を脳表面の全体に適用し, 睡眠紡錘波の発生の順序など空間的情報の伝達について検討を加えた. その結果, 前頭部, 頭頂部, 側頭部にかけて, 睡眠紡錘波の出現の周波数の差違を定量的に計算できることが示された. しかし左と右の対照とする胸部位について有意の差は見られないことが示された. さらに睡眠の深さとともに, 睡眠紡錘波の周波数が, わずかながらも上昇する傾向のあることが明らかとなった. これらの詳細な知見は, 本研究で提案したダブル・スタンダード法によって明らかにされ, 本方法とユレーレンス法との関係も示した. 次に人間の精神活動が眼球運動にも現れることから, 一般に2次元の眼球運動がいかなるものか, また2次元の眼球運動をいかに計測するかという観点から2次元律動性眼球運動に注目し, 新しい計測方法を提案した. 2次元眼球運動の計測は歪み等の困難さを伴い, 補正をいかに行うかということが大きな問題となる. 多くの実験を行い, 2次元のたるみ補正のための補正式を導き, この補正式後の解析を行い, 2次元律動性眼球運動の特性を明らかにした. この結果, 律動性眼球運動は方向性と大きさに依存する制御特性を示した. 本研究では筋活動電位との協調性による情報処理の問題が残されている.
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