研究概要 |
大量輸送を目的とした鉄道高速化に際しては, 集電性能は無論のこと, 集電材料の摩耗量や電波雑音・騒音発生などの問題を解決する必要があり, それには集電部の離線に伴う放電発生頻度を定量的に把握しておくことが不可欠である. 本研究は, 慴動集電系の高周波電流(雑音電流)を用いた離線放電発生頻度(離線率)の新規な測定法の開発を目的として, 離線アークを対象とする測定原理の考案とこれの有効性の検証並びに問題点の洗い出しを行った. 結果の概要は次のとおりである. 測定原理は, パンタグラフの雑音電流に対する帯域フィルタのVHF帯1周波インパルス応答のうち連続二組の極大間隔がアーク継続または消滅時間に対応することを利用し, これらの逐次測定に基づいている. まず, ガウス型帯域フィルタを使用した場合の離線率は放電生起回数と無関係にほぼ正しく測定し得ることを計算機シミュレーションで示した. 次に, 測定原理に基づく離線率の概算推定式を導出し, これらの計算値とシミュレーション結果との比較から本測定法の理論的な妥当性・有効性を裏付けた. 更に, 実用の非ガウス型帯域フィルタを用いた場合の測定誤差を検討し, そのときの誤差改善を可能とする測定法として, フィルタ応答包絡線の離散値データを用いるアルゴリズム並びに集電系回路定数やアーク電圧値などの先見情報を必要としない統計的検定を応用する推定アルゴリズムを考案した. 以上の結果を実験的に検証するために, パーソナルコンピュータ支援のスペクトル波形解析装置を製作し, これの装置動作を繰り返しパルスと疑似ランダムパルスのデューティ比の測定により確認した. 慴動接点を用いた慴動集電系のモデル実験から, 微小アークのない条件で本測定法の妥当性は確認できたものの, 微小アークの発生する条件では測定誤差が大きいこと, この原因は帯域フィルタの応答重なりと離散値データに重畳するノイズとで生ずること, などがわかった. 現在, これらの問題に対処できる方式として, アーク中の特異な電流変動を利用した離線率推定法の検討を行っている.
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