研究概要 |
鋼材の線状加熱板曲げ加工における加熱条件と角変形量の関係ならびに角変形の生成機構を明らかにするために, 一連の実験研究と有限要素法による理論解析を行って, 以下に述べるような研究成果を得た. 1.板厚12, 16, 19mmの三種類の鋼板を使用して, アセチレン流量と加熱速度を変え計29通りの線状加熱実験を行い, 鋼板の温度分布ならびに角変形量を計測した. 温度計測値と有限要素法による非定常熱伝導解析結果を比較して, 酸素アセチレン炎による鋼板加熱時の熱流束分布は2つのガウス分布の重ね合わせで近似できることを示し, 酸素アセチレン炎の熱効率とアセチレン流量, 鋼板の板厚および加熱速度の関係を表わす図表を作成し, 有限要素法による2次元非定常熱伝導解析プログラムを用いて加熱線に垂直な板の横断面内の任意時刻における任意の点の温度の計算を可能にした. 2.角変形量の実測値を整理して, 加熱条件から角変形量を推定する近似式を求めた. この近似式による角変形の推定値は, 本研究の実験範囲内ではほぼ±20%以内で実測値と一致した. 3.加熱線の中央で加熱後方に単位長さを有する加熱線に垂直な板の横断面について, 有限要素法による2次元熱断塑性解析を行い過渡変位ならびに残留変位の計算値と実測値を比較検討した. その結果, 移動する熱源の前方に存在する低温域による変形拘束が角変形の生成に極めて重要な役割りを果たしており, 熱源が考える断面を通過して数秒経過するまで板の裏面のすべての節点の垂直変位を拘束しその後これを解除することによって, 少なくとも板厚が12mmの場合には角変形のシミュレーション解析がほぼ可能であること, 線状加熱による角変形は主として温度上昇過程で板の表面側に生じる圧縮塑性変形と主として温度降下過程で板の裏面側に生じる引張塑性変形の重量効果によるものであることなど, 線状加熱加工に関する重要な知見を得ることができた.
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