研究概要 |
オセーン近似は, 低レイノルズ数においてはナヴィエストークス方程式で表わされる実在の非圧縮性粘性流れの, 最もよい線型化手法として知られている. これを解析することは, 粘性流れの基本的性質を把握する上で極めて有用であり, 古くから物体のまわりの定常・非定常流れの解析がなされてきた. しかし, 粘性抵抗が最小になるような物体の形状を求めるという逆問題については, 従来はストークス近似のもとでしかなされていなかった. 本研究はこの逆問題をオセーン流れにこれを適用しようと試みるものである. 初年度の昭和61年度では, 主として, 逆問題の定式化, 前後対称と仮定した条件のもとでの最適形状の求解を行ない, 最適解として凸レンズ形の形状が得られた. 最終年度である本年度は, これを前後非対称形状の問題に拡張して問題の定式化と数値解法を試みた. 得られた結果は次の通りである. (i)前後対称の条件を課さずに求めた基本最適形状(面積や長さなどの内一つの条件だけを付けたもの)は昨年度と同じ前後対称形となった. レイノルズ数に対する依存性も同様であった. (ii)第1条件の他に重心位置などを追加指定する2条件問題においては, 重心を中央より前方に指定した場合, いわゆる流線形に近い形状が得られたがその中央付近では基本最適形状とその曲率がほぼ同じになった. したがって, このオセーンの最適形状は極めて安定した解であることが判った. しかし, 反面, 高レイノルズ数では解は不定であること, 多拘束条件下では解の存在範囲が限定されることなどいくつかの問題点も見出された. さらに, 非線型ナヴィエ・ストークス流れについても最小抵抗問題の定式化を行なった.
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