研究概要 |
2年間に亘って船舶の耐航性能評価システムの開発を目的とした研究を行った. 研究の最終目的は必ずしも満足できる状態まで達成されてはいない. 研究を通して非常に多くの知見を得ることができ, 今後の研究課題を見出すこともできたと考える. 本研究の成果は研究成果報告書に詳しく述べられるが得られた知見, 成果を要約すると以下のようになる. (1)船舶を1つのシステムとして取扱い, 更に船体を初め乗客, 貨物, 乗員, 船内機器等を船舶を構成するサブシステムとして扱えば, 耐航性能の量的綜合評価が可能である. 即ち, 評価システム構築のアルゴリズムを確立することができたと考える. (2)航海性能の評価は, 当該船舶に課せられた使命の達成度を以って量的評価すべきである. 例えば, 巡視船の場合には救助成功率, 客船, フェリー等の場合には稼働率等は重要な評価関数である. (3)耐航性能を評価するための評価基準である乗組員の作業性, 乗客の乗心地, 貨物, 船体の安全性等が波浪, 船体応答から受ける影響(Performance Degradation)を正しく把握する必要がある. 現在用いられている基準を用いることは危険である. (4)特に船舶をman-machineシステムとして据える場合にはHuman Performanceの正しい把握, 推定が必要であり, この分野の研究の遅れを強く感ずる. (5)他の工業製品においては, 購入後一定期間の保証が約束されているが, 船舶の場合には完成直後の速力保証しか行われていない. シーマージン(設計余裕)の正しい理解に基づいた推定法の確立が必要である.
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