研究概要 |
岩盤は, 普通多くの地質不連続面(断層, 節理など)によって縦横に切断されていて, その水理・力学的性質は, このような地質不連続面への配慮なしには, 正しく評価できない. 昭和61〜62年度の研究によって, このように認識に立って, 応力と水との連成を考慮した節理性岩盤の浸透解析の基礎式が検討された. 得られた成果を要約すれば, 以下に示す通りである. 1.極めて複雑な様相を呈する地質不連続面の幾何学的特徴は, 不連続面の方向, 寸法, 密度によって定義されるクラックテンソルによって一般的に表される. クラックテンソルを用いて, 本来不連続な岩盤をそれと水理・力学的に等価な多孔質媒体に変換する一手法が開発されると共に, その限界についても明らかにされた. 2.岩盤が亀裂を含む弾性体であるとモデル化されることによって, その巨視的弾性コンプライアンス, 透水テンソルが理論的に検討された. それら物理常数を用いて, 応力と水との連成問題に係わる基礎方程式が誘導された. 3.地質不連続面の変形性, 透水性に関する室内実験, あるいは, 実岩盤で実施されたルジオン試験の結果を収集・整理して, 実岩盤の浸透解析のための入力パラメータが決められた. その結果, イ)実岩盤の透水性は応力に強く依存すること, ロ)岩盤の構造がたとえ等方的であっても, 応力による誘導異方性が現れ, その透水性は透水テンソルで評価すべきこと, ハ)実際の地質不連続面を用いた室内実験は, 応力依存の透水テンソルを見積もる上で有効であること, などが明らかになった. 4.以上の成果を踏まえて, 応力との達成を考慮した浸透解析の数値解析が実行され, 連成効果の具体的な役割について検討された.
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