研究概要 |
本研究は完全反射や消波性の海岸構造物による波浪の反射特性を調べたものである. 本研究では幅60センチ, 長さ24メートルの造波水路を水路方向に二分割し, 片側の水路に反射構造物を設置し, 他方の水路端には砂利とガラス玉で勾配を作り反射率を3%以下に押えるようにした. まず, 入射波, 反射波の分離について詳細な実験を行った. 一般に入反射波の分離には線形重複波理論に基づいたHealyの方法が用いられるが, 本研究では, まずHealyの方法の適用限界を重複波の節の振幅から明らかにした. またHealyの方法の範囲外においては, タドバクシュ等により得られた非線形重複波理論から計算される見かけの反射率に近い値を実験値が示すことが明らかにされた. 次に二本の水路において造波機から等しい距離において波形を計測し, 電気的引算法を用いて非線形重複波の入反射波の分離を試みた. その結果重複波の腹部で測定した反射率は完全反射の構造物でも1, 0をこえるのに対して, 節部で測定した反射率は1, 0となった. つまり, 重複波の腹部においては, 入・反射波の相互干渉が強く表われ, 節部ではその効果が小さいことが明らかとなった. また, 振幅が大きく, アーセル数の大きな非線形性の強い波ほど, 腹部で異常な反射率を示すことが明らかとなった. これは消波性構造物に対する部分重複波の場合も全く同様な結果であることが明らかとなった. また, このように水路を二分割して進行波と重複波から電気的引算法により反射波特性を明らかにする方法の場合は, 進行波側の反射率が零でなければならないため干渉効果を見るには誤差が生ずる. これを克服するために, 両水路から得られる波形より最小二乗法で入反射波を分離する新しい方法を提案し良好な結果を得た.
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