研究概要 |
本研究の成果を整理すると以下のようである. (1)居住地選択モデルの構築 (a)余剰最大化問題によるアプローチ:ローリーモデルのフレームワークにランダム効用理論を適用して世帯の居住地選択行動を定式化すると, 地域全体の通勤およびサービス施設利用に関する交通余剰最大化問題として表現でき, これにより世帯の行動原理を考慮した土地利用モデルを構築した. しかし, 地価を内生変数として扱えないことが問題である. (b)ランダム付け値理論によるアプローチ:世帯の宅地に対する付け値を確率変数として扱うことにより, 世帯の立地パターンを確率的に表現するような居住地選択モデルを構築した. しかし, 分散パラメータの推定方法が明確でないことが問題である. (2)住宅立地と地価の同時予測モデルの構築: ・市場均衡理論によるアプローチ:予算制約下での効用最大化行動原理に基づいて構築された居住地選択モデルと土地市場の需給の均衡条件から導かれた地価決定モデルによって形成される連立方程式体系により, 住宅立地と地価の同時予測モデルを構築した. 本モデルは, 行動基準が複雑な土地供給者の行動を明示的に扱わないところに特徴があるが, 地価決定モデルの設定時に土地政策等の変数を組み込むことができる. (3)住環境便益測定法の開発: ・EVの概念によるアプローチ:世帯に対してCES型効用関数を特定化し, 住環境変化による便益を地価変動で測定可能にした. しかし, ここでは都市モデルにスモール・オープンを仮定しており, このモデルで成立する世帯効用レベル一定という条件が一般には成立し難いのではないかということが問題である.
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