研究概要 |
航路や泊地などの水域施設の計画は, 原則として運輸省「港湾の施設の技術上の基準」に基づいて立案されるが, この技術基準には個々の操船環境下において操船者がもつ操船意図が反映されていないため, 港湾管理者が作成した計画案は, その都度操船実務者により手直しを受けることになり, 実際上計画立案のための手続きは非常に煩雑になっている. また, 水域施設以外の港湾諸施設にかんする運輸省基準はすべて適切な評価方法により安全性を定量的に検討したうえでその基準がさだめられているにもかかわらず, 水域施設に関しては安全性の水準とは対応のないままにその基準が定められており, また, 定量的な安全性評価方法すらも確立していないのが現状である. ここで行う研究は, 上記諸問題を解決するために, 種々の操船局面における安全性の評価方法を開発し, そして, 合理的な水域施設備方策決定手法を提案しようとするものであるが, とくに, 本研究は施設提供者と施設利用者の計画に対する評価の差を計画立案の初期段階において整合性をとろうとするものであり, この点に大きな特色を有するものである. 本研究では, 係留泊地の整備に関する課題ならびに操船水域の整備に関する課題についてそれぞれ代表的な操船局面をとりあげ, そして, その安全性評価の取り扱いに関し, 具体的な提案を行った. また, 本研究を通じて, 操船者の意識行動をどのように具体化し, そして, それを水域施設の整備計画にどのような形でとりこむことができるかについて, その方向性を示し得たものと思う.
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