研究概要 |
本研究は住宅地区の物的環境を分析, および, 評価する手法について, 物理的環境指標に加え, 意識指標を導入し考察を行ったものである. とくに, 環境評価指標として意識指標を用いる意識, 有効性について, 以前(5〜6年前)に行った調査研究結果と, この度行った調査研究結果を比較することにより, その意識指標の有する特性について考察した. その結果, (1)意識指標値は地区の物的環境の変化に伴い変化する性格をもっており, 環境評価指標として利用可能である. (2)防災環境評価に比べ交通環境評価の方が物理変化に鋭敏である. (3)本研究で設定した「住宅地区環境総合意識」は住宅地区環境の総合的な側面を表す指標であった. (4)意識指標のなかで「自動車による危険・不安意識」, 「迷惑・生活妨害意識」, 「火災の危険・不安意識」等の指標が有意な経年変化の差がみられた. (5)意識指標相互間の関係は経年変化に関係なく強い相関関係がみられた. (6)交通環境, 防災環境の両面から住宅地区環境を分析した結果, 両環境とも住宅地区環境にかなり影響しており, 両環境指標を説明変数とする重回帰式を作成した結果も良好なものであった. さらに, 交通環境に関して路線単位で意識指標, 物理指標, 両者間の関係について分析した結果, (1)物理量の経年変化に伴い, 意識指標も比較的常識的な変化が見られた. (2)物理指標のうち, 「自動車交通量」, 「歩道の形態」等が意識指標に比較的影響の強い指標であった. (3)交通環境は片側に歩道のある自動車交通量の多い, 一方通行現制が実施されている路線で悪くなる傾向にあった. (4)交通事故率が1000件/億台・キロ付近までは急激に意識指標値が悪くなる傾向にあり, それ以上になると横ばい状況となっていた. 以上のように, 意識指標について各種の側面から分析, 考察を行い, その特性について検討を行ったが, さらに, この研究を進展させ, 標準的な環境評価手法として確立させる必要がある.
|