研究概要 |
本研究では下水浄化活性汚泥の膨化の再現性と合理性のある制御方法を見い出すことを目的として膨化の原因糸状細菌の単離レベルと活性汚泥レベルの両面より種々の検討を行った. その結果以下のような知見を得ることができた. (1)単離レベルからの検討 下水における膨化の主要な原因細菌は先にTypeII-3(EikelboomのType 021Nに相当)として報告した糸状性イオウ酸化細菌である. この細菌の55単離株のうちおもに8株を用いて一般的な細菌学的な性質を明らかにすると同時に形態的・生理的性質, および, 無機イオウ化合物の異化的代謝について明らかにした. (2)混合培養レベルからの検討 TypeII-3による膨化の生成条件を予め明らかにしたのち, 種々の嫌気条件を施したFed-batchの連続注入で活性汚泥を嫌気・好気法で培養し有機物とリンの代謝様式の差を観察しながらTypeII-3を含む糸状細菌とポリリン酸蓄積菌の消長を観察した. その結果, 膨化の効果的な抑制には嫌気条件下でリン介在で有機物を活性汚泥に効果的に摂取させ密なフロックを持つリン蓄積細菌を汚泥中に蓄積させる必要のあることを明らかにした. 観察された全ての糸状細菌はリン介在での有機物摂取をおこなわなかった. しかしながら, 嫌気条件下での有機物除去は必ずしもリン介在だけにはよらないため効果的な膨化の抑制にはさらに詳細な条件の割り出しが必要である. 嫌気条件を付加することにより糸状細菌が抑制される機構は(i)リン溶出によるpH低下, (ii)リン溶出によるリン濃度の増加による増殖抑制, (iii)嫌気条件下でリン介在で有機物を十分に摂取できないことによっている.
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