研究概要 |
本研究は, 実大の1/3程度のらせん鉄筋柱28体(14体宛2年次に分割)の繰返し加力実験により, 次項を明らかにすることを目的とする. 1) らせん鉄筋柱の終局剪断強度に及ぼす諸因子の定量化 2) 柱の剪断に関する諸家の強度式や各国の規準式の, 近年における剪断実験資料に対する適合性の再検討と, 新たな設計式の提示 研究の成果は, 次のように要約される. (1)らせん鉄筋で補強された正八角形断面柱の, ひび割れの発生や破壊状況については, 通常の角形帯筋柱の状況に類似している. (2) らせん鉄筋柱の終局剪断強度は, コンクリートょうど(Fe), 軸方向力(N), らせん鉄筋比及び主筋比の増加に伴って増大し, 逆に, 柱高さの増加に伴って減少する傾向を示し, 通常の角形帯筋柱の挙動と類似している. (3) らせん鉄筋で補強された正八角形断面柱の終局剪断強度は, らせん鉄筋や主筋のサイズや本数及び断面積がそれぞれ等しい正方形断面柱に置換することにより, 既存の諸計算式によって安全側に推算できる. (4) 日本建築学会では, 部材の剪断強度(Qu)を, トラス機構とアーチ機構との和(Qut+Qua)によってA, B2つの方法を提示しようとしているが, らせん鉄筋による補強強度実験値はトラス機構(B法)で表わされ, らせん鉄筋以外の負担強度実験値はアーチ機構(B法)の強度に(1+η_O)を乗じた修正値にほぼ一致する. ここにη_O(=N/A・Fc, Aは柱断面積)は軸圧係数. (5)近年における剪断実験資料118個を用いて, 諸家の柱剪断強度式や各国の規準式の適合正を比較検討した結果, 上記(4)に記したように, 剪断強度はB法によるトラス機構と修正アーチ機構との和[Qu=Qut+(1+η_O)Qua]によって表わす修正設計式が, 最も適合性を示した.
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