研究概要 |
鉄筋コンクリート造建物の耐震壁には, 窓や出入口等のため, 開口を設けることが多い. 開口壁に関する過去の震害例には, 開口模壁部の斜めせん断破壊が多く, 開口壁を耐震要素として合理的に設計ではれば, 鉄筋コンクリート建物の耐震性はさらに向上すると考えられる. 本研究は, 開口がある鉄筋コンクリート造連層耐震壁の耐震性を把握すると共に, 新たな開口壁の補強方法として, 開口横壁の部分に斜め筋を補強することを提案し, その効果を実験的に検討したものである. 実験に用いた試験体は, 3〜4階建の1階部分に相当する実物の1/3スケールの1スパン模型である. 試験体には, 日本建築学会規準の開口補強筋量を補強したもの, 今回提案する斜め筋を開口横の断面最小部分に補強したものの2種類がある. 実験結果から次のような結論を得た. 1)開口横壁部に斜め補強筋を補強することは, せん断耐力の向上に有効であることが分った. 今回の補強量からは5〜15%上昇が確認された. 2)開口横壁部の斜め補強筋が開口壁のせん断耐力に寄与するのは引張筋が主で, その評価は有効断面積に換算してeAsd=AsdhCosαで表わせる. 3)開口横壁部の補強方法を改善することにより, 最大耐力以後の耐力低下を少なくし, 限界変形能を大きくできる. 4)日本建築学会鉄筋コンクリート構造計算規準によって算定した縦横方向に配筋した開口補強筋は, 破壊形状から判断して, 直接耐力向上には有効ではないが, 隅角部のひび割れの進展を防ぐ効果は認められた. 以上のように, 今回の研究から開口横壁部分を斜め筋で補強することは, 耐震性の向上に有効であることが分った. この結果を活用して, 合理的な補強方法について, 今後もこの研究を続けていきたいと考えている.
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