研究概要 |
数十年に一度のような激震を鋼構造物が受ける場合の溶接接合部の強度や変形能力などの要求性能を明らかにすることは耐震安全性の面から非常に重要なことの一つである. 溶接接合部は大きな応力集中やひずみ集中を受けることは周知の事実である. また溶接部はエンドタブや裏当金などの切欠きや溶接欠陥などの形状的不連続部が存在し一層応力集中やひずみ集中を助長する結果となっている. 激震時に想定される変位まで接合部が変形した場合, 鋼板と溶接部にどのような力学的性能と破壊靱性が要求され, その要求性能は溶接欠陥長さとの関連でどのように変化するのかを接合部の形状や部材寸法と関連して決定するため基礎資料を提示することを目的とし研究を行い, 次のような結果が得られた. 1.鋼材及び溶接熱響部などの破壊靱性試験から, 動的な破壊靱性の遷移温度は静的に比べかなり上昇することが確認された. 2.溶接欠陥や裏当金などの施工上の切欠きなどを有する接合部モデル試験体による実験から, 溶け込み不良で人工的に作った欠陥や裏当金などの切欠きよりも溶接部の靱性の方が破壊に大きく影響することが明らかになった. また動的破壊靱性の遷移温度以下で動的に外力を受ける場合は静的載荷に比較し著しく変形能力が低下することも確認された. 3.立体クラックである溶接欠陥を正確に破壊力学的に取扱うために, 3次元問題の定式化を行い, その精度について確認した. その結果弾性では応力拡大係数(K)とJ積分が一致し, 単調載荷時にはJ積分値と〓積分値がほぼ一致することが明らかになった. 激震時には溶接欠陥は大きな塑性歪の繰返し力を受けることから3次元問題の〓積分を使う必要があるが, それが可能になった.
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