研究概要 |
本研究では, (1)微速気流の視観察を可能にするトレイサーと光源の検討, 及び(2)模型箱を用いた冷気滞留型上方開放換気機構の解明, そしてそれに基づいた(3)上方開放床冷房時の温度分布と熱負荷の変動の数値解析を取り上げている. (1)の課題では, 光源にアルゴンレーザー, トレイサーに炭酸マグネシウムを用いた. 従前のガルバノ振子による観察光面では, 反射鏡の振れ角を大きくすると, 光面輝度が低下し, トレイサーの反射光量が減少するので, 高輝度の光面を施囲させる工夫でそれを解決した. また, 流向, 流速を知るために変位を記述するレーザーシャターを工夫した. これによって, 時間・空間平均での速度ベクトルを得ることができるようになった. (2)の課題では, 外気を基準にした温度分布と侵入深度について検討した. 外気温に等しい高さを中立軸とすれば, 外冷気は, その高さを越えて下層の冷気滞留層に侵入したり, あるいは乱したりしないということが分った. また, 1室を上・中・下の3室に分割し, 各々の小室の熱平衡式の方から外気交換換気量, 相互層間換気量について同定し, 外気交換換気量は, 外気温を基準にした温度分布と深い相関のあることが見い出された. (3)の課題では, 1室3の換気モデルを提案し, それに基づいた室温変動・熱負荷変動の数値解析を行なった. 対象空間を事務所建物の執務室とし, 床冷房に上方開放熱対流換気を組み合せた場合, 床冷房単独よりも, 換気除熱が加わった分だけ, 併用の床冷房負荷が減少することを見い出した. この方式は, もともと必要な換気を自然エネルギーの動力で行う訳で, 搬送動力に関して相当の省エネルギー化を図かることができる. 以上の検討より, 北海道の如き地域においては, 完全密閉空調よりも開放冷房の有利なることを提案している.
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