研究概要 |
初年度の調査(第1回)において, 持家化とその後の居住過程を含め持家をしたことについて, 高齢者層に評価をしてもらった結果, 持家後の改善・維持のための工事とその負担が大きく, 評価に関係することが分かった. 本年度は, この結果を踏まえ, 持家取得後の改善・維持工事を中心に調査(第2回)し, 分析した. その結果は, 次の通りである. 1.持家の評価は, 当初の居住水準と支払い条件がそれ以後に影響し, 居住過程において低水準の場合には, 増改築により向上が図られる. その場合に水準が低いほど工事規模が大きく, 費用もかさみ, 負担意識が増大する. 2.加えて, 住宅の維持保全に一定必要な修繕がなされ, 工事規模および費用は, 増改築に比して低いが, 当初の費用に加え, 負担意識に反映する. 3.建売住宅の場合, 不特定多数を対象として設計された限られたなかから選択せざるをえず, 従って改善のための増改築が増大する. 4.公社建売の場合, 建設時期の住宅施策から, 規模水準が最も低く, 増改築, なかでも増築が早い時期から, また回を重ね行われ, 費用も大きい. その結果, 規模の改善はなされるが, 間取りの評価の向上までは至らない. 5.民間建売の場合, 当初の規模水準は, 前者より高いが, 間取り・設備の不満が高く, 増改築の割合は高く, 加えて修繕の比率が増大する. そのため高い購入費に新たな工事費が重なり, 負担感が増し, 評価は最も厳しい. 6.民間注文住宅では, 居住者の意向が反映され, 増改築は減り, 維持のための修繕中心となる. しかし, 当初の費用を含め, 負担意識は低くない. 7.以上から, 持家政策を進めるにあたっては, 当初の供給住宅の質と購入・資金条件が重要であると同時に, 居住過程における改善・維持に対し, より低利の資金融資制度の導入, 指導相談機関の設置, 専門業者の育成等が求められる.
|