研究概要 |
1.炭酸塩鉱物単独懸濁液の界面化学的諸性状の把握 方解石,毒重石,ストロンチアン石,菱マンガン鉱,白鈴鉱を試料として用い、鉱物懸濁液のpH経時変化および【H^+】,【OH^-】消費量測定を行った。得られた結果についてイオン平衡論の立場から検討を行い、次のようなことを明らかにした。前三者の鉱物は、水に懸濁した時、初期に大気相の存在を無視した鉱物一水系の平衡に向い、その後ゆっくりと鉱物一水一大気系の平衡に到達した。一方、後二者の鉱物は、比較的短時間で鉱物一水一大気系の平衡に単調に到達した。平衡に至る過程における上述の相違は、溶解度積と関係があり、溶解度積の値が比較的大きい時、前者の挙動を示した。また、等電点,【H^+】,【OH^-】消費量零点と筆者らが平衡論的に定義したIEP(aq)の値との間に一定の関系が存在した。 2.炭酸塩鉱物が共存する複数鉱物懸濁液の界面化学的諸性状と、それらが各鉱物の浮選特性に及ぼす影響の把握 筆者らが考案・開発した装置・方法を用いて、蛍石一方解石共存系について検討を行った。懸濁液のpH経時変化および液相の各化学種濃度は、両鉱物が共存する系と各鉱物が単独で存在する系とでは異なり、方解石含有率がわずか0.7%の場合でも明らかに共存の影響が認められた。両鉱物共存系における各イオンの溶出と吸着の過程は、溶解度積の規制の下に進行していることを示した。両鉱物共存系における各鉱物の浮選挙動は、共存鉱物の影響を顕著に受け、各鉱物単独系での挙動と異なった。また、その影響の仕方はpHにより変化した。陽イオン捕収剤を用いた場合、両鉱物共存系における各鉱物の浮選挙動は共存相手鉱物の単独系時における挙動に似ること陰イオン捕収剤を用いた場合、pHの低い領域で共存鉱物の影響が小さくなることなどを見出した。
|