研究概要 |
岩手県滝の上(葛根田)地熱地域の現在開発中の区域を中心とする東西約6km・南北約3kmの範囲, および隣接する松川地熱地域に至る三ツ石山登山直(約8km)上で, 約120測点で微動の観測を行い, 主として振幅および卓越周波数分布から微動と地熱活動との関係について検討を行った. その結果以下のようなことが明らかになった. 1.葛根田地熱の蒸気生産基地群および滝の上温泉を中心に, 白沼・葛根田林林道入口・三ツ石山登山道中腹・南白沢で囲まれる範囲で速度振幅が大きい. 一方, 滝の上トンネル東南側および平ケ蔵沼登山道入口から葛根田皮下流にむかって特に振幅の小さな範囲が広がっている. また, 三ツ石山登山道では, 滝の上温泉から約2km以上離れると松川温泉近傍まで振幅が小さい. 2.上記の振幅の大きな範囲では2〜15rlz程度の比較的高周波が卓越し, 一方, 振幅の小さな範囲では周期1.5〜3秒の脈動と推測される成分のみが見い出される. 3.速度振幅の大きな範囲は, 断層が集中し, 地表において噴気・温泉などの地熱活動が見い出される区域を包括している. また, 微動の生たる振動源は地表下やや深部に存在するのではないかと推測される. 以上のように, 本研究により, 葛根田地熱地域の滝の上温泉を中心とする2〜3km四方の広い範囲で, 地熱活動に関連すると推測される2〜15Hzの振動を捕えることに成功し, いわゆる地熱微動法の貯留層探査への手がかりが得られた. しかし, 波の伝播経路・波の発生源との関係等なお不明確な点が多く, 微動の到来方向についての検討等今後の研究の展開が必要と考えられる.
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