研究概要 |
独立栄養酸化細菌のThiobaci77us fenrrooxidansの生育pHの下限は1.4とされている. 本研究はpH1.0以下で第一鉄イオンを酸化できる細菌の育成とその基質酸化挙動の解析を目的とした. T.ferroxidansに耐酸性を付与する手段として, 生育pHの下限が0.5とされている硫黄酸化細菌Thiobacillus thiooxidasの耐酸性に着目し, T.thiooxedansの持ち伝達性プラスミドがT.ferrooxedansに移ることによってT.ferrooxidansがT.thiooxidansの耐酸性を獲得し売ると仮定した. そこで, T.thiooxidansとT.ferrooxidansとが主体と考えられる菌(単体硫黄をエネルギー源とした集積培養菌)に対して単体硫黄をエネルギー源とする回分培養を繰り返すことによって培養液のpHを低下させpH1以下で硫黄を酸化できる状態にした. この菌を第一鉄イオンをエネルギー源として初期pH0.6で培養したところ, 第一鉄イオンが酸化され鉄酸化菌の増殖がみられた. これはT.thiooxidansからT.ferrooxidansへのプラスミドの移行が起こり, それによって耐酸性を獲得したT.ferrooxidansが単体硫黄をエネルギー源としたpH1以下での回分培養の間に増殖し, さらにpH1以下において第一鉄イオンを酸化したものと考えられた. ところが, 数ヶ月後この菌を用いて初期pH0.6で第一鉄イオンの酸化実験を行ったところ, 培地に単体硫黄を添加した場合は鉄酸化菌の活発な増殖がみられたが, 単体硫黄無添加では第一鉄イオンは酸化されたものの鉄酸化菌の増殖はほとんどみられなかった. さらに, 単体硫黄あるいは第一鉄イオンをエネルギー源とした集積培養菌を用いて初期pH0.6で第一鉄イオンの酸化実験を行ったところ, いずれの集積培養菌を用いた場合でも培地に単体硫黄を添加すれば鉄酸化菌が増殖し第一鉄イオンを酸化した. これより, T.thiooxidansからのプラスミドの以降とは別に単体硫黄が直接T.ferrooxidansの耐酸性に関与することが示唆される.
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