研究概要 |
本研究は地熱貯留層および熱水変質帯と周辺地層との比抵抗値が, 数百倍以上も異なる性質に着目して, ボーリング坑のケーシングパイプを流電電極として利用することにより, 地下深部へ電流を流し, 探査対象物を直接励起しながら, これによって地表面に生じる電位分布を計測して, 地下の導電性物体(地熱貯留層)を直接的に探査する方法を研究開発したものである. この目的のために, まず大型水槽を利用した鉱体モデル実験, 差分近似法に基づく3次元鉱体のモデル計算などによって, 種々のケースについてシミュレーション実験を行い, 電極配置および測定方式の設計を行うと共に, 鉱体によって生じる異常抽出のデータ処理法について研究した. 次に種々の物理探査法の適用およびその結果に基づく多数の坑井堀削により, 地下深部の地熱構造が最も良く知られている大分県玖珠郡八丁原の九州電力の地熱地帯で鉱体流電電法を実施し, 探査データの解析結果を従来の地表からの物理探査法であるシュランベルジャー法, 地磁気地電流(MT)法探査データの解析結果と比較検討した. その結果, 鉱体流電法の電位分布から導かれる見掛比抵抗分布を示すコンター図は, シュランベルジャー法およびMT法による探査データのインバージョン解析により得られている低比抵抗層の分布と極めて類似することを確認できた. この事は, 鉱体流電法は高比抵抗の新期溶岩が厚く堆積する地域にも有効であり, その下位(深部)の熱水変質帯と地熱貯留層の分布を直接探査できることを意味している. 本法はフィールド調査も簡単であり, 分解能も従来の点電極を利用する探査法よりも高いため地熱資源開発の初期段階(探査段階)で実施すれば, 坑井堀削の成功率を飛躍的に向上できる. このように鉱体流電法(流電電位法)は, 近年の計測技術およびデータ処理の発展により, 地熱資源の探査に対しても十分応用できると結論できる.
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